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Copaiba ブラジルからの贈り物


治療薬、薬用オイル、忌避剤

アマゾン先住民族のあいだでは、傷・潰よう・破傷風の予防、止血、皮膚疾患、泌尿器系の疾患などに効能があるとして利用されてきた。傷を負った動物も幹から滲出するオイルをなめたり体にこすりつけたりして傷を癒すとされている。16世紀からの植民者は、上記のほかに、とりわけ気管支炎の治療薬として利用してきた。さらに粘膜の炎症や皮膚がんにも効果があるとされている。

このようにコパイバオイルは長年にわたって民間薬として知られており、研究機関による薬効の研究もされている。コパイバの薬用としての有効性の議論は科学者のあいだでは収束していないものの、その利用を推奨している。コパイバ製品は広く消費者の支持を得て、消炎・抗菌・皮膚軟化等の効用を利用したスキンケア・ヘアケア用品、洗剤などの芳香剤や香水、薬用オイル、サプリメント、虫除け等として販売されている。また、家禽産業での抗菌薬の代替としての可能性も研究されている。日本では近年、薬用オイルや害虫用忌避剤として商品化がすすめられている。

このほか、アマゾン地域では都市から離れた集落に住む住民のあいだでは、バイクなどの燃料不足に見舞われることがあり、その代替燃料としても利用されてきた。燃料としての利用可能性も検討されてきたが、価格やより有用性が大きいという点から薬用にするほうがよいとの考えがこれまで一般的であった。

さらにコパイバは木材利用もされており、ペルーの2013年のコパイバ(Copaifera reticulate)の丸太生産量および製材品生産量はそれぞれ57,840.12㎥、14,457.21㎥(農業潅漑省、2014)、2015年はそれぞれ59,118.50㎥、18,987.82㎥となっている。

生産、国際取引の動向

ブラジルが世界最大のコパイバオイルの生産国(主に北部地域)かつ消費国である。1990年代後半以降、その生産量は増加し、2000年頃には400t/年程度の生産量を維持していた(実際の生産量はこれを上回るとされている)。2009年には538t、2010年は580tと生産量は急増した後、生産量は減少傾向が続いているが、1㎏あたり生産金額は大幅に増加している(表1)。この2010年前後の生産量増加は社会全般にその治療効果が広まったことによるとされている。ただし、コパイバオイルは市場では多くがリットル単位での少量で取引され、採取ベースでも同様である。したがって売手・買手双方とも正確に売買の記録をとっておらず、その取引高は推定によらざるを得ない。