於新医協、症例検討会にて、2007年5月13日発表。現在完治、ステロイド療法は2012年2月に終える (4年10か月で完治)する。
Presentation リウマチ性多発筋痛症(PDFファイル ※1.29MB)
症例報告 - リウマチ性多発筋痛症
初診: 2006年10月19日
患者: 年齢63才、女性、身長158cm、体重53kg
職業: 主婦(定年後義母の介護に専念)
家族: ご主人と義母(90歳)の三人暮らし、息子二人は独立、次男が今秋結婚予定
主訴: 近位筋肉の痛み:頸部、肩、臀部、上腕部、大腿部
体を動かす事が辛い:歩行、手の挙上、布団、椅子から立ち上り
しゃがんだ姿勢から立ち上がる、風呂の出入り、バスに乗る時、足が上がりにくい、洗濯物を物干しにかける
37度微熱(四月検査入院で分かった)高血圧
既往症:子宮、卵巣片方切除 (48歳)20日間入院、術後から片側後頭部の激しい、痛み止め効かない頭痛が続いた。耳鼻科にて三叉神経痛と診断。
脈状: 沈やや数、弱、六部定位: 肝虚、腎虚
二便: 尿 昼多い、便秘しやすい
嗜好: 甘いものが好き、間食
生理状態: 手足の冷え、腹診良
体質: 寒がり
性格;几帳面、誠実、弱音を吐かない、厳格で評判の義母さんの愚痴などこぼす事な良いお嫁さん、周りの人に大変ねと言われるが実際に介護の大変さに自覚はないよう。
薬の服用: 降圧剤アムロジン、カルバン服用 (三年服用中)
経過:
2006年5月頃 (本人談)
気づき
陶芸を妹さんとした時、いつもはできる粘土の口切り、紐で手前に引く動作、力が入らなくてできなかった。(今年四月に思い出した。)
八月頃からから上腕部、大腿部に朝のこわばりがはじまった。動いていると楽になる。お風呂で楽になる。
2006年7月 血液検査異常なし、A医院、血圧80/100mmHgが 100/150mmHg
2006年10月19日 (初診)
脈状: 沈やや数、弱、六部定位: 肝虚
本治 曲泉、陰谷、太衝 (鍼) 標治 頸部、背部(天宗)、腰部(志室)、上腕、肘、臀部(鍼、灸頭鍼、灸)
月一度の青梅の往診。 筋肉痛:上腕部、大腿部、膝まわり内側の痛み、可動域に問題はない。今朝、軽いめまい。
治療後は体がほぐれて楽になる。
アムロジン、カルバンは血圧剤の副作用、横紋筋融解症の記載なし。血圧剤服用の際の注意事項:飲む時間帯主治医に聞く、たくさんのお水で飲む、五時間あけるを指示。
11月16日
脈状: 沈やや数、弱、六部定位: 肝虚
本治 曲泉、太衝 (鍼) 標治 頸部、上腕、肘、臀部(鍼、パイオネックス灸頭鍼、灸)
一ヶ月治療が空くので改善がみられないが、鍼灸で楽になる。
11月30日 青梅医院検査結果
CRP 1.1 (0.03定量)、白血球数 7800(8月6800)
その他CEAなど異常なし、マンモグラフィー検査。
12月21日
脈状: 沈遅、弱、六部定位: 肝虚
本治 曲泉、太衝 (鍼) 標治 頸部、上腕、肘、臀部(灸頭鍼、灸)
夜間痛、最近痛みが強くなってきた。風邪を引いたのでつらさが増した。歯科金属16本、年明けに治療したい(セラミックに交換)。お風呂で正座をしている。
2007年1月18日
脈状: 沈やや数、弱、六部定位: 肝虚
本治 曲泉、太衝 (鍼) 標治 頸部、上腕、肘、臀部(パイオネックス、灸 頭鍼、灸)施術後は可動域動きは可、痛みは残る、数時間で元に戻る。
1月23日
漢方医から二週間分処方、十全大補湯、桂枝二越脾一湯加減
トラコマーティス、ヘルペスウィルスが関与? 2週間分、変化なし。
2月15日
脈状: 沈やや遅、弱、六部定位: 肝虚
本治 曲泉、太衝 (鍼) 標治 頸部、上腕、肘、臀部(運動法、灸頭鍼、灸)
結滞、結髪、困難。 両上腕痛み部位の範囲が肘の方に広がった。
肩井 パイオネックス
3月15日
脈状: 沈やや数、弱、六部定位: 肝虚
本治 曲泉、太衝 (灸) 標治 頸部、上腕、肘、臀部(灸)
運動鍼:足踏み上げ30度から90度、上腕挙上70度から130度可能になる。
線維筋痛症の話題もでてきたのでセカンドオピニオンを求め
青梅総合病院, 神経内科での検査を勧める。
3月末
1週間検査入院、CRP 1.1から2.67↑ (0.03基準値)、
神経系に異常なし、CTスキャン、MRI, 筋電図、膠原病マイナス、リウマチ検査マイナス、リウマチ性多発筋痛症と言われる。ステロイド剤、プレドニン15mgの投与予定、肺に影があるのでそれを調べてからの治療。
4月19日
脈状: 腎虚、手足は冷たいが近位、躯幹は暖かい。
本治 復溜、経渠 (灸) 標治 大椎、中脘、曲池、三陰交、照海、足三里(灸)
灸のみにした。
義母さんのショートステイも始まり、入院中の療養か顔の艶よし、体重ももどる。微熱37度、食欲あり。
足三里、太衝、三陰交、大椎(灸)の自宅でのカマヤ灸(3~5壮)も続ける。スワイソー運動を無理のない程度に続ける。背中などのお灸は自分でできない。ご主人には頼めない。
4月27日
電話、肺の影は心配ないとの事で下記が処方された。2週間分プレドニン5mg一日3回とアロファーロルカプセル5mg(骨粗しょう症)、病院から帰って午後2時ごろ服用すでに7時頃には楽になった感じがあると連絡あり。
4月30日
CRP 0.79↓。電話にて、とても楽に動けるようになって嬉しい、手の挙上、しゃがんだ姿勢から立ち上がりが楽になった。平熱。お灸も楽しい。足三里、太衝、三陰交。
太衝、曲泉、中封の点灸、村田先生アドバイス
太衝:原穴、兪土穴、湿、曲泉:合水穴、寒、中封:経金穴、燥、のお灸、点灸が良いでしょう。患部が硬く動きにくいは冷え、弛緩、熱感は熱から、微熱は脈にあらわれなかった。真熱、内熱があれば浮数、注意:台座灸は炎症で熱がある所は痛みが増す。点灸、知熱灸
5月11日
電話、薬を服用して2週間経過、病院から以前の薬に追加して胃薬が処方される。(副作用)食欲がでるので注意するようにと言われた。歩行楽、手の挙上(90度)、椅子から立ち上り、階段下りるのが普通に足を交互に降りられるようになった。膝の後ろが張っていたのが楽になった。肩や背中の張りはある。体重は5Kg減は2Kg戻って50Kg。セルフケアーの灸は継続。
5月23日
正座が楽にできるようになって嬉しい。右肩が重い。体重は1~2Kg減少。疲れたら横に20分でもするように勧めた。休む習慣がないのでかんばってしまう。義母の入院(骨粗しょう症大腿部自然骨折)により、家での介助は無くなり楽になった。義母は退院後もケアハウスに入院予定。患者の日常生活の改善が家族間で話し合われた。
リウマチ性多発性筋痛症 (PMR、リウマチ様痛風)
鎮痛剤ほとんど効きかない。日本に少ない病気のため、専門外の医師は気づきにくい。治療後は痛みは急速に薄れて忘れたようになる。
発病年齢 平均65~70歳、リウマトイド因子陰性、自己抗体が証明されないことが多いので慢性関節リウマチとは異なる。筋原性酵素、CPK、GOT,GPT,LDHの上昇なし。ステロイド少量療法、量を減らして一年以上継続。
筋肉痛の原因(推論)PMRの成立には動脈炎が基礎になっている。 筋肉の小動脈には炎症はなく、比較的大きいな鎖骨下動脈、腸骨動脈の動脈炎のためにその支配下にある筋肉に乏血状態をきたす結果、筋肉が痛む(岡崎1976)、その他、臨床検査の所見も乏しく不可解な点が少なくない。
ステロイド少量療法
ステロイド剤初回使用量はプレドニン換算量10~15mg/日(経口:2~3回分服)で、これでおよそ12時間後から症状が改善し始める。患者のそれまでの辛さからみれば、劇的といっていいほどの改善がみられる。 以上の治療法で効果があったならば、血沈(赤血球沈降速度、40mm/時以上)やCRPの値を参考にしながら2週間ごとに1~2mg/日ずつ減量し、維持量を5mg前後にして一年以上継続する。ふつう1~2年で軽快して寛解状態に入るが、中には10年以上ステロイド剤を継続しなければならない例もある。
6月21日
用事があって治療キャンセル、だいぶ良くなってきて出かける事を始める。
6月28日
体重3~4Kg増えて以前の体重に戻る。ステロイド剤、プレドニン15mg量はかわるず35日分処方される。
7月19日
ステロイドの副作用:血圧の上昇、食欲旺盛:甘いもの好む。1~2Kg体重増える。
良くなってきたので、灸をしてない。 また始めるように勧める。
ウォーキング毎日40分している。
8月11日
ステロイド剤、プレドニン15mg量は変わらず35日分処方される。
8月16日
血圧の上昇、猛暑と庭の草取りで憔悴、易疲労感強い
太衝、中封、曲泉、曲池、三里(足) (点灸、自宅では千年灸)
8月30日
8月初旬、血圧 110/180mmHg , 腰痛、前屈痛 (草刈をした。)
崑崙、臨泣、中府、圧痛あり 皮内鍼
9月10日
CRP 0.01、ステロイド剤、プレドニン15mg量は変わらず35日分処方される。
CRPが正常に戻ったのでCRPを標値にステロイド剤の量を減らしてくれるよう
頼んでみるように勧める。担当医の答え:六ヶ月以上はこの量が必要といわれた。
4/27から処方始ったので六ヶ月目は10月頃。副作用が強いのでなるべく量を減らす傾向にしたい。
9月20日
脈状: 浮やや数、やや実、六部定位: 腎虚
下肢の浮腫、腰痛、肩の張り、CRP 0.01↓、血圧 90/150mmHg (降圧剤アムロジンから変える)、満月様顔貌:顏のリンパマッサージ
10月18日
脈状: 浮やや数、やや実 六部定位: 肝虚
下肢の浮腫、足裏肺反射区の腫れ、血圧 100/180mmHg ↑満月様顔貌、目の腫れ
肩背部の凝り・腰痛(起立筋)
標治: 背部、膀胱系の反応点 (刺鍼)
腹部、巨闕・左期門・左不容・気海 (刺鍼)
下肢:三陰交・復溜・太衝・足三里 (刺鍼) 隠白・大敦(井穴刺絡)
根気良く肩背部の凝りをほぐし、上腹部の気滞を除く治療を続ける。
(血圧、朝高いため、晩・朝に服用) 降圧剤を先月変えても、更に上がるので再度薬を変えたが効果がない。副作用。)
満月様顔貌、目の腫れ:顏のリンパマッサージ
11月15日
脈状: 浮やや数、やや実、 六部定位: 腎虚
下肢の浮腫、頻尿、足裏肺反射区の腫れ、
血圧 80/140mmHg↓動悸,
満月様顔貌、目の腫れ、右頬赤い
易疲労感 (夕方)肩背部の凝り・ギックリ腰(10日前)
本治: 曲泉、陰谷、太衝
標治: 背部:身柱・心兪、膀胱経の反応点 (刺鍼)
腹部、巨闕・左期門・左不容・ (刺鍼)、気海 (温灸)
下肢:三陰交・復溜・太衝・足三里 (刺鍼)
隠白・大敦・百会(刺絡)
血圧降圧剤アテレック、カルバン、プレドニン15mmから10mm
(10月22日より)
12月末血液検査結果待ち
満月様顔貌、目の腫れ:顏のリンパマッサージ(田中ゆ久子の造顏マッサージ)
(血圧、朝高いため、晩・朝に服用) 降圧剤を先月変えても、更に上がるので再度薬を変えたが下がらない)近況
- 最近、以前習っていたヨガを半年ぶりに始めた。有酸素運動で気を取り込む。
- 生活に余裕ができたので、近くに居る実母とも行き来ができるようになった。 ストレス解消をする。
- 11月17日次男結婚式
アドバイス
- 夜中のトイレは北側で寒いといっていたので、寒暖の差に気をつけるよう。
・ A医院にて降圧剤、A綜合病院にてステロイド剤の処方が別々にされているので連絡を取るよう。ブレドニン減量のため。紹介状。
考察と結語:
肩甲骨回りや腰周りの痛みは、棘上、棘下筋や大殿筋の消耗で働き過ぎの人にでると思って治療をしていたが回復は見られない場合の例であった。 また検査結果からも顕著な数字が現れないが今回はCRPの値の上昇、貧血、微熱、全身倦怠感、体重減少がみられた。
今後は全身倦怠感、筋肉の張りを少しでも軽減する全身治療を心がける。QOLの改善。セルフケアーによる灸の励行。 胃腸機能を整える足三里、肩の緊張を取る曲池、体を温める三陰交、照海、肝を強める太衝の灸を勧めている。
またこれから副作用で現れるだろう症状を軽減していく治療。主に灸、棒灸を使用するが陰陽のバランスを考えた治療をする。急性期は筋肉に負担をかけない方が良かったが、今後は身体のこわばり、筋力快復には、症状により治療をしていく。
- 失われた再生力を活性化、呼び覚ます治療を模索したい。鍼灸に加え、色彩療法、湯液、ヨガ、操体法などでトータルにアプローチする。
参考:ステロイド副作用、胃潰瘍、精神の病気、緑内障、白内障、高血圧、電解質異常、心臓病、糖尿病、骨粗鬆症
飲み始めに多い副作用、いらいら感、不眠、消化不良、下痢、吐き気、食欲増進。
免疫反応を抑制するので感染症に気をつける。肺炎などで無くなった人もいる。
今の元気、みせかけである。8割と思って行動を自制する。(村田先生)
腸潰瘍、欝、交換神経過多、興奮してしまう。CRPも落ち着いたのでステロイドの量の軽減が望まれる。
参考文献:PC柳瀬敏幸(1998)最近の知識に学ぶ
鍼灸OSAKA79 特集IIP43~46
症候からの鑑別診断の進め方 羊土社
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現在は完治して普段と変わらぬ生活をしている。ステロイドは5年で終了、最後の2年は1mg
と少量になった。 これもご本人と努力とかかりつけ医の東洋医学に関するご理解の賜物である。 平成2013年9月27日